レースカーテン

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ジェス

ジェス

 やって来たのは湖畔近くの小さな小屋。幸一の所有している物件なのかは不明だが、定期的に手入れがなされているようで、埃や汚れは見当たらない。

「えっと、今夜には、信頼の出来る遺伝子操作兵専門のお医者さんが来ると思います。一応、合言葉を決めておいたんで、『山は何色?』と聞いて下さい。『無色』と答えたら、その人なんで」

 携帯電話で誰かと何か話してきた幸一は、応急処置を済ませたジェスと、前もってここに連れてきていたロザリアにそう説明した。

「木一君……正直、今、僕は混乱している……」

 幸一を見据えるジェスは、己の不手際を悔むように唇を噛み締めている。それをそっと受け止める幸一の右眼は、左と同じく普段と変わらぬ黒瞳。

 ロザリアはそんな二人を見比べるだけで、何を聞けばいいのかも見当がつかない。

「いくつか、聞きたいことが……」

 携帯が鳴った。幸一の持つ携帯ではなく、ジェスが持っていたフランクの携帯が。

 机の上のそれを幸一が取る。

「もしもし」

「……うん? その声は昆虫をベースにした彼ではありませんね? 誰ですか?」

「用件を言え」

 ロザリアは眼を剥いている。無機的なその声は、およそ幸一が発したものとは思えない。

『ああ、彼を助け出した人ですね。銃器を使っていたという事は、あのサークルにいるただ一人の人間ですか。すいませんが、人間の貴方には用事はありません。彼に代わって貰えませんかね?』

 幸一は携帯の音量を上げ、ジェスにも聞こえるようにした。

「そのまま言え。音量を上げたから、聞こえる」

『では。ジェス・ロウストラリア君、君のお友達は預からせて頂いております。無事に帰して欲しければ、こちらの指定した場所に一人で来て頂けませんか?』

「断る」