プレディクト
答えたのはジェスではなく、幸一。
「ジェスさんは重傷だ、動かせられるような傷では無い」
うそぶく幸一に抗議するようジェスは何か言いかけたが、幸一がそれを横目で制止する。
『ふむ、ではもう一人の女性を迎えに来させてくれるのでしょか?』
「……スイス連邦特殊警察、対遺伝子操作兵機関『パルス』所属、コードネーム『プレディクト』」
呟かれたその呪文に、相手が息を呑む気配が伝わってきた。
「あんたの目的は遺伝子操作兵のサンプルだろ? なら、『プレディクト』にはそれ以上の価値があるはずだが?」
『……よろしい。取引相手は、貴方にしましょう』
「場所と時刻は?」
『明日の早朝一時に再び連絡をします。その時に、場所は追って。貴方以外の者が来た場合、お二人の身の安全は保証しかねます』
「二人を出せ」
恫喝にも似た要求に、森野はクスクス笑う。
『ジェスさん? それともロザリアちゃん?』
「……ぼくです、幸一です」
『だ、ダメだよ! 来ちゃ絶対にダメ!』ほとんど悲鳴に近い叫びを無視する形で幸一は続ける。
「大丈夫です……絶対に助けますから」
『麗しい友情……いえ、愛情ですか? あるいは』
森野の哄笑を遮るように、幸一は会話を打ち切り、携帯を机の上に置く。