操作
ひょっとしたら、『遺伝子操作兵』によって作られた、全国的にも有名なこのサークルに入れば、姉が彼の存在を見つけられるとも、考えたかもしれない。
「……だから、マナさんの『……怖くても、いいんじゃないのかな?』という言葉で、肩が軽くなった。『君なら、君が望むような立派な人になれるよ』という言葉が、嬉しかった」
『感涙するような話の腰を折って申し訳ありませんが、準備が出来ました。すいませんが、ご足労願えますか?』
幸一が音もなく立ちあがった。コートを翻し、背を向ける。
「幸一君!」
黒い背が立ち止まる。顧みるのが怖かった。過去の自分が姉を拒絶したように、マナが、物騒な銃器を抱え、普段の自分とは別人のような今の自分を拒絶されるのが、幸一は怖かった。
故に幸一は振り向かずに、再び歩き出そうとする。
「……生きて、帰ってきて。絶対に、無理はしないで」
声に導かれるように、幸一はマナを見る。
友人と己の生命の危機に怯えながらも、彼女は精一杯の笑みを浮かべていた。
「またみんなで一緒に、勉強して、笑って、遊んで……楽しい大学生活、送ろう」
「……はい」
応えるように幸一も微笑し、力強く頷き部屋を出た。